コスタリカ

  • 地域:中米
  • 生産国:コスタリカ
  • 生産地:サンホセ県タラス地区サンクリストバルスール
  • 生産者:ボシュ農園 ジョバンニ・モンゲ
  • 収穫標高:1,800m
  • 品種:カツーラ
  • 製法:アナエロビックワイニー(48h)
  • クロップ:2020/2021


プロファイル
カカオにカラメルを加えた風味、アンズのような滑らかな口当たりと柔らかい酸味と甘味。ダイナミックでも繊細な複雑な印象

おすすめ
少し気分を変えたい、他とは違うコーヒーをお求めの方に

インプレッション
千一珈琲はブラジルの「発酵ナチュラル」から醸造工程を取り入れたコーヒーをいくつかご紹介してきました。今回はコスタリカのアナエアロビックです。アナエアロビックは嫌気発酵と呼ばれるやり方で、身近なもので言うと味噌や糠漬けがそれに該当するかと思います。コーヒーの場合、漬け込む時間は短く、今回のコスタリカでは48時間になります。風味の特徴ですが、焙煎初期段階ではシナモン系が強く感じられます。前回のブラジル「発酵ナチュラル」ではシナモンを強調した比較的初期の焙煎段階をご提供しておりましたが、お客さまのニーズを考え今回はしっかりローストしております。期待通りのコーヒーらしさの中に上質な口当たりとアンズの様な柔らかな酸味が感じられるようになっております。

発酵処理中

生産国について
私のコスタリカに抱く印象は、あまり大規模ではなく非常にユニークなコーヒーを生産しているイメージです。自然保護区が多く生物多様といくキーワードで真っ先に思いつく国はコスタリカです。他にも軍隊を保有していないなど意外な一面もあります。コーヒーについてですが、昔からマイクロロットやダイレクトミルといったコーヒー生産に力を入れている印象が強く、少量で特徴の濃いコーヒー豆が多いと思っています。自家焙煎店で取り扱っているところも多いのも、特徴的なコーヒーが多いからと言ったからでは無いでしょうか。

コスタリカの特徴
国や地域が出す風味の印象というより、各農園の個性が光るコーヒーが多い印象です。例えるとダイヤの原石を発掘するが如く、探せば印象深いコーヒーと巡り合う事があるという感じです。店主が思うに、中米にはホンジュラスやパナマ、グァテマラなどコーヒー生産では量、質ともにトップランナーの国がひしめいています。その中でコーヒーを販売するにはやはり工夫をしないと生き抜いていけないからより特徴的な物を農園からダイレクトにとなったのだと思っています。

農園について
コーヒー豆を販売しているアタカ通商さんの紹介ページには

サンホセ州タラス地区にある2015年スタートの新しい農園。今年もカツーラのアナエロビック製法を買付!
ジョバンニ・モンゲがタラス地区のサンクリストバルスール、標高1800メートルに新しい農園を始めたのは2015年。コーヒー産地に蔓延したサビ病被害のあとである。スペシャルティーコーヒーを作るのは人生で初めての経験。家族総出でスペシャルティーコーヒー生産に力を注いでいる。今回のアナエロビックワイニーは収穫4年目のロット。嫌気発酵48時間。

アタカ通商ホームページより

もともとは、コモディティーを生産していた農園の様でスペシャリティーコーヒーの生産を追加した様です。サビ病の怖いところは葉が落ちてしまう事。葉がなければ根から水も吸い上げられないですし、養分を光合成でエネルギーに変換できません。花が開花できなければ実もつきません。それよりも一番厄介なのは、繁殖力が強いこと。コーヒー農園の視察に来るバイヤーの靴についた泥で広がることもよく知られています。農園にとってはコーヒー豆を買ってくれる大切なお客さんなので、むげに対応するのは難しい様です。コモディティーは取引量が重要なので病気によるダメージは農園経営の逼迫を招きかねます。その点スペシャリティーは品質重視なので、手間はかかりますが経営安定には良い選択だと思います。

コーヒー豆について
中米の主力品種のカツーラ、収穫量が多くブラジル含め多くのコーヒー豆生産国で栽培されています。ブルボン系統ということもあって、ナッツ感より果実味が強い印象を持ちます。栽培標高も1,800mと十分な標高で作られています。これらの事から雑味の少ないクリーンなコーヒーが作られるのではと想像できます。実際に来た豆の色はブラウン、外観はスクリーンサイズ16前後の大きさである程度のサイズばらつきはあるものの許容範囲でした。香りはナチュラルでアナエアロビック製法なのでフルーティーな香りとサワーの様な香りがします。チャフもナチュラル製法のせいか、かなり多めです。豆の欠点ですが、虫食いが散見され、当店のダメージピック対象は全体の2%になっています。

焙煎について
チャフが多いせいもあって、高火力で焼くとコゲ臭がしてしまうので、火力は気持ち低めで焙煎時間を長めにとって焙煎しています。とはいえ、焙煎時間が長いと風味が抜けてしまうので、そこは経験で調整が必要だと思います。狙う風味はシナモンとアプリコット、コーヒーとしてのしっかりとした飲みごたえも備えたいので、焙煎深度はハイロースト後半シティーロースト前半というところです。シナモンの風味は焙煎深度が深くなると消えていきますが、微かに残る程度にしています。

最後に
アナエアロビックは近年注目の製法で、品種や標高だけで概ね評価されるコーヒー豆ですが、そのアドバンテージがなくてもアピールポイントを作れるため、農家の収益アップに貢献できるなどメリットがあります。しかし、ロースター(消費者側)としては、特徴が前面に出過ぎてしまい、コーヒーとしてのバランスに欠く製品もある為、どの様にラインナップするか、仕上げるかが課題だと思います。いずれにせよ、いまは過渡期でこれからどんどん進化して行くので目の離せない注目の製法だと思います。

千一珈琲の店主